時野つばきさんインタビュー
時野つばき
■企画・シナリオ■

時野つばき

◇PROFILE◇
物書き人生の始まりは地方の小さな広告代理店。
就職情報誌の企画、編集および企業用パンフレット、求人広告の企画・文章をコツコツ書きつつどうにかバブル崩壊をやりすごし、1999年12月よりフリーのライターとして短編小説、PCゲームのシナリオを書き始める。
代表作はPCゲーム「巫女さん細腕繁盛記」「プリンセス小夜曲」(すたじお緑茶)、WEB企画「杉並でGO!」(小説担当)(Spray)
小さな犬と大きな猫に振り回されつつ、2時間サスペンスドラマと時代劇、特撮にうつつを抜かす日々を送ってます。

「紅姫」でシナリオを担当されました時野つばきさんです。

Q.キネティックノベルを一言で言うと。

従来のデジタルコミックや小説よりもう一歩、積極的に読み手に近付いた『動く読み物』。

一時期、歩いて行ける範囲に日本語の読み物が一切売っていないと言う、活字中毒には耐えられない状況で暮らしていた事がありまして。(家人の海外勤務でデンマークに引っ越して、英語の本にさえ事欠くド田舎に1年近く滞在してたんですね)
パソコンで片っ端からデジタルブックを読み漁りました。でもある時ふと思ったんです。「せっかくパソコンで本を読んでるんだから、固定のテキストと挿絵を見るだけじゃ寂しいなあ」と。

キネティックノベルはこの時感じた『寂しさ』を埋めてくれる、一つの答えでした。

Q.キネティックノベル開発のきっかけは?

以前から興味は持っていたのですが、メインマシンがMacなので読む機会はありませんでした。
昨年、サガプラネッツさんで全年齢対象のデジタルノベルの書き手を募集していたので応募し、採用されてみたらこれがキネティックノベルのお仕事だったと言う(笑)
『駅ですれ違う何となく気になる子』がいきなり同じクラスに転校してきたような心境でした。
さっそく、体験版、製品版あわせて3本を一気読み。
1本として同じ印象のものはなく、料理次第でいかようにも化ける柔軟な媒体なんだ、と驚きました。

Q.今後、キネティックノベルは作られますか? また、どのようなお話を考えられますか?

4コマ雑誌を読むような感覚のショートなネタを集めた短編集的なもの、男の子同士がライトに仲良くするお話なんかも書いてみたいです。

Q.ダウンロード販売についてひとことお願いします。

ネット環境さえあれば、世界中どこに居てもすぐ買えるし、読める。通信販売も条件は同じだけど、届くまで時間がかかってしまう。
紙媒体やパッケージ販売に比べて認知度はまだまだ低いけれど、実は全世界規模に広がっている市場だと思います。

Q.インターネット認証という形態については?

最初はとまどうけれど、キネノベの場合はまず無料の体験版で練習できるし。
ソーシャルネットワーキングサイトやYahooオークションなどで触れる機会のある人も増えているので、これからどんどん垣根は低くなって行くのではないでしょうか。

Q.本作について、苦労されたことはありますか?

一つ。既出の書き手さんが皆ものすごいキャリアの方ばかりでビビりました。

二つ。実際の歴史を下敷きにしたお話だった。史実を無視すると薄っぺらな文章になるし、縛られすぎると教科書みたいな面白みの無い文になってしまう。ふっ切るまで1センテンス書く度にオロオロしてました。

三つ。ヒロインの麗華像をなかなかつかむことができなかった。はっきり言って一番の難関で、何度も何度も打ち合わせを繰り返しました。しかしながら担当のKuroさんの求めるものと私の目指すものの距離がだんだん近付いて行って、ピタっと重なった瞬間にはもう、じぃんと喜びを噛み締めてしまいました…。

Q.キネティックノベルは今後、どのような展開になってほしいですか?

技術的に難しい所は多々あるかとは思うのですが、Mac版の販売を強く希望します。
この価格、クォリティのゲームはMacにはほとんどありません。ユーザーの絶対数は少ないけれど、確実に需要はあるはず。いや、あります!

Q.キネティックノベル制作中にあった面白い出来事などはありますでしょうか?

たまたま横浜を訪れる機会がありまして、時代が違うけれど同じ中国の話だし…と言うことで関帝廟にお参りしたのです。
参拝が終わって、最後に心の中で『これこれこう言うお話を書くことになりましたのでよろしくお願いいたします』と報告しつつ一礼したその時…。
朝からしつこく続いていた酷い頭痛が、すーっと抜けちゃったんですね。
後で中国拳法をやっている友人にこのことを話すと「ああ、関公は礼に厚い人だから」とサラっと言われて…。
『うーわー、この感覚だ、これが中国の空気なんだ!』と。
その時の感覚を、「紅姫」をお読みいただいた方に少しでも伝えらたらいいのですが。

Q.本作のテーマは?

恋する乙女はいつの時代も強気で元気。
千年前の中国大陸を駆け抜けた女の子を、21世紀のあなたに少しでも身近に感じていただければ幸いです。

Q.お客様に向けて、見所などをひとつお願いします。

「紅姫」を書くにあたって、ン十年ぶりに受験前の高校生の様に必死で勉強しました。
とは言え、歴史ドキュメンタリーではなくあくまでエンタティンメント、娯楽性優先でいくつか大嘘かましてます!
小さなお友達はまちがってもテストの回答欄にお書きになりませぬ様。大きなお友達はオトナの余裕でほほ笑みつつ、虚々々実々入り交じった中華幻想恋譚をお楽しみいくださいませ。