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第1回

キネティックノベルってどういうもの? というのは、よく聞かれる質問なのですが、まだまだ新しい手法ですので、厳しく型をはめてしまうより、新しい可能性を模索していっている段階です。

そこで、キネティックノベルの最新作の制作過程を、4回にわたって披露していきます!

実際の開発過程を読めば、キネティックノベルの可能性を感じ取っていただけると思います。
普通は知ることのない裏舞台も、お見せしましょう!




さてさて、今回題材にするのは、9月24日発売予定のキネティックノベル最新作
『ソード・ワールド2.0リプレイ たのだん 〜いにしえの船を追えっ!〜』(ocelot)です。

 

長いタイトルですね(汗)。
なので、今後は「たのだん」と呼ぶことにしましょう。



ちなみに、「たのだん」とは「楽しいダンジョン」の略ということで、楽しそうな雰囲気が漂ってくるでしょう?




現在までに『神曲奏界ポリフォニカ』等、キネティックノベルは何タイトルも発売されていますが、ポリフォニカのように小説っぽいものからマンガっぽいものまで、いろいろな種類があります。

その中で「たのだん」は、「ソード・ワールド2.0」という名前のTRPG(テーブルトーク ロールプレイング・ゲーム)がベースになってます。

TRPGって何? という方も多いと思いますが、これは、サイコロや鉛筆を使って、遊ぶテーブルゲームの1種です。ドラクエやFFみたいな冒険を、コンピュータ相手ではなく、友達と一緒に遊ぶゲームです。

詳しくは、こちらで説明しておりますので、ご存じない方は、お時間がありましたらご一読下さい。

『たのだん』

一口にテーブルゲームといっても、「ソード・ワールド2.0」は、小説やテレビゲームなど、様々なジャンルに広がっているメジャーなゲームです。

そもそも、2.0と名前がついているところから想像できるように、初代である──いわゆる1.0のルールブックは、1989年に富士見書房から文庫版として発売されていまして、世紀を超えて20年以上も遊び続けられているゲームなのです。





本やテレビゲームなど、どのメディアでも、オリジナルのファンタジー世界を舞台とした、剣と魔法の冒険が繰り広げられる、楽しい作品なのです。

 

これは、ラクシアの中でも、今回の舞台となるルキスラという国の地図です。
ここで、冒険者のグループが胸躍る冒険を繰り広げるわけです。


「たのだん」は、シャーリィという女の子の冒険者が仲間と共に成長していく物語で、モンスターとのバトルやダンジョンの探索など、楽しい要素が満載なのです!

 

と、「たのだん」自体についての説明は、ここまでにして、そろそろ制作の話に入りましょう。




「たのだん」のキネティックノベル化の企画が立ち上がったのは、もう一昨年の話。

キネティックノベルの特徴を生かせる新作を探していた時に、TRPGのリプレイって、ひょっとするとキネティックノベルとの相性がいいんじゃないだろうか、と思いついたのが始まりです。

ここで、もう一つのキーワード。タイトルにも入っている言葉

「リプレイ」

というのがあります。

リプレイというのは、サイコロなどを使ってTRPGを遊んだところを、録音しておいて、それを再現した読み物のことです。

プレイヤーではなく、キャラクターになりきった台詞を並べて、小説や脚本のように楽しむ読み物で、リプレイの本も沢山出版されています。

  



チロル「モンスターが出てきたよっ!」
シャーリィ「わたし、戦いたい!」
ポポ「それは論理的に無謀ですね」

という感じで、文章を読むことによってゲームを追体験できるのです。

この台詞中心という点はキネティックノベルにした時にテンポがよくなるはずという点や、戦闘やダンジョンといった要素を、演出等で表現すれば、キネティックノベルの新しい可能性を切り開くことが出来るんじゃないだろうかと思ったわけです。

ということで、ソード・ワールド2.0のリプレイを題材にキネティックノベルを開発するという段取りになりました。

この先、とんでもない苦難 楽しい開発期間が待っていることなど、そのときには想像すらできてませんでした。

〜次回に続く〜




□コラムと連動企画!4コマ連載開始♪ by 池田淳






第2回

制作中の新作キネティックノベル「たのだん」の画面は、こんな感じ。



会話中心なので、こういう構成になっています。

小説っぽい地の文のある「神曲奏界ポリフォニカ」は、文字数を多く表示するため、こんな感じのメッセージウィンドウを多用してます。



このように、題材の特徴によって、いろいろと工夫しているわけです。

というわけで、「たのだん」の話に戻って、どういうように制作されていくのか追っていきましょう。




前回説明しましたように、「リプレイ」──プレイを再現、と言うからには、実際にプレイしないと制作ができないわけで、企画から数ヶ月後、いよいよプレイ開始となりました。

プレイの準備といってもTRPGではGM(ゲームマスター)役の1人がシナリオやモンスターなどのデータを準備するだけで、あとのプレイヤー(普通は3〜6人くらい)は、キャラクターを作っておくだけでいいのです。

キャラクターは、キャラクターシートと呼ばれる紙に数字や文字で記録しておきます。



このキャラは力が強いのか、魔法が得意なのか、どういうアイテムを持っているのか記録しておくわけです。

ちなみに、キネティックノベル版の「たのだん」では、ルールを覚える必要はなくて、いつものキネティックノベルのように読んで楽しむことができます。


ルールは知らなくてもOK!


大切なことなので、大きな声で言いました。
キネティックノベルを楽しむのに、ルールなどのハードルは不要で、手軽に気軽に読んで楽しめるものにしてあります。


ちなみに、同じキャラがキネティックノベル版では、こんな風に表示されます。



*数値はプレイ中に変化しているので、紙のシートとは一致しません。

話や展開に応じて、能力などの数値も自動的に変わっていきますので、快適快適。




話は戻って、いよいよプレイの準備です。

「たのだん」の場合は、シャーリィたちメインのキャラクターは作成済みなので、キネティックノベルにだけ特別出演するライバルたちのキャラクターを作成します。


普通は、1つのグループで遊ぶのですが、せっかくキネティックノベルなので、2つのグループを競わせるような仕掛けをGMが考えたわけです。同じ目標を競わせたり、正反対の目標を持たせて駆け引きしたりすると面白さが倍増しますから。その分、キャラクターたちは苦労するんですけどね。GM、お主も悪よの〜。

というわけで、新たに参加するライバルグループは3人



3人とも女性だったりします。け、決して受け狙いというわけではないですが、せっかくなんで見目麗しい方が良いですよね!

1人が1キャラクターを担当するわけなので、プレイヤーも新たに3人が必要になりました。

そこで、社命によりocelotのスタッフが1人、プレイヤーとして参加することに。TRPGを実際に体験しておいたほうが、演出をする時にも役に立つし、遊べるし、良いことずくめなのです。けっこう、本人は楽しんでプレイしてましたが(笑)。


さて、プレイ開始。

1回のプレイ(セッションと呼びます)は約2、3時間。もっと長くなることもありますが、たいていは夕方集まって、途中出前で食事をしながら遊びます。

端から見ると、コロコロとサイコロを振りながら、わいわい騒いでいる怪しい人たちに見えますが、イマジネーションで異世界だってモンスターだって目の前に見えてきます。キネティックノベルだと、実際にCGで見られるのも嬉しいですね。

このモンスターが、原作のルールブックでモンスターのイラストを描かれている西野先生にお願いすることが出来たので、これまたリアルな怖いモンスターになってます。



さてさて、セッションは、ダンジョンを探索したり、モンスターに襲われているエルフを助けたりしながら、物語は山あり谷ありで進んでいきます。



冒険の様子はキネティックノベルで味わっていただくとして、セッションは1回では終わりません。
1回目のラストの展開に応じて、GMがシナリオを修正して次のセッションに臨むのです。

だって、遊ぶのは人間なので、コンピュータRPGと違って、

 右に行く
 左に行く

の二択だけじゃなくって、穴を掘ってもぐるかも知れないし、引き返すことだってあるわけです。

というわけで1週間から2週間に1回ずつ、合計4回プラス延長戦1回(最後の1回で終わらなかったんです…汗)のセッションが繰り広げられました。

セッションの様子は、ずっとボイスレコーダーで記録しておきます。
これがリプレイの「種」になるわけです。


と、ここまで簡単に書いてきましたが、企画からここまでで、すでに半年以上が経過してます。
これでも普通のゲームでいうとシナリオが完成……したわけではないところが難しいところ。

ここから録音した音声をテキストに落として、それをシナリオに完成させていかなければならないのです。雑談も録音されてますし、そのままテキストにしただけでは冗長になるというのが理由です。


雑談はともかく、脚色なしの実際のプレイは、どんな感じだったかという「裏リプレイ」は特典冊子に掲載予定なので、キネティックノベル本体と比べると面白いかも知れませんね。

すべての土台となるシナリオの進行は、こういう具合に進んでいったわけですが、もちろんキネティックノベルには、他の要素も必要です。

絵、音楽、歌、そして音声。

どれもキネティックノベルを構成する要素として重要なものです。
それらについては、次回!

〜次回に続く〜




□4コマ連載・第2回♪ by 池田淳






第3回

「声優さんは、キャラクターに命を吹き込んでくれる」収録の時に、よく感じることです。


立ち絵と文字の台詞だけでは味わえない、生きた感じを声優さんが作り出してくれるのは、何度経験してもすごいなぁと、嬉しい驚きを感じます。


同じ台詞でも、声優さんの表現によって、いろんなニュアンスを持つわけで、いかに重要なパートなのか明かです。

「ありがとう」という台詞があったとして、

心からの「ありがとう」と、嫌々の「ありがとう」と、ときめきを感じながらの「ありがとう」と、全部ニュアンスが違うわけで、それを文章から読み取って演じ分けてくださるのです。まさに職人芸! 声優さんの重要度が分かろうというものです。


そこで今本作では通常のオーディションに加えて、主人公のシャーリィと、新キャラになるセティという2人のキャラクターの声優さんについて、公開オーディションをおこなうことになりました。

 

ネットから応募していただき、選考をおこないました。最終選考に残った方は、DreamParty2009東京春のステージにて最終審査がおこなわれました。


声優オーディションのレポートについては、こちら。



大勢の観衆が見守る中、ステージ上で演技や歌を披露するという、非常に緊張した中、実力を発揮されたお二人が選ばれました。

シャーリィ役に選ばれた金元寿子さんは、このオーディションをきっかけに、テレビアニメ等でもご活躍です。ソ・ラ・ノ・ヲ・トのヒロインのカナタ役と言えばおわかりかと思いますし、この秋も主役を演じられるそうです。

今後も、キネティックノベルが、新人声優さんの登竜門になってくれると嬉しい限りであります。


その他のキャスティングも、WORKING!の伊波まひる役や初音ミクでも有名な藤田咲さん、ヘタリアのスペイン役で有名な井上剛さん、ニコニコ動画の歌ってみたなどでご活躍されているnayutaさんなどなど、人気実力充分な素晴らしい声優陣が揃えられました。



  

ねっ、キャラが喋ると、ものすごく生きた感じがするでしょう?



キャスティングが決まれば、いよいよ音声収録です。

収録は、大阪の株式会社ビジュアルアーツ本社にある音声スタジオでおこなわれました。

アニメの収録だと、大勢の出演者が一堂に会して、複数のマイクで一気に収録するのですが、キネティックノベルの場合だと、一人ずつ収録することになります。


それぞれの声優さんが一杯書き込みをされた収録台本を手に、大阪に足を運んでいただきました。

収録は約1週間。毎日、朝から晩までスタジオにつめて、収録の日々が続きました。特に主役シャーリィ役の金元さんは、台詞だけではなく小説で言うと地の文にあたる「語り」もあるので、台本量が膨大になります。そのため、何日にも渡っての収録になりました。もちろん、喉を痛めてはいけませんから休息日を入れたりしながら長期大阪に滞在していただきました。

現代の物語と違って、たのだんはファンタジー世界の話。オリジナルの魔法の言葉や用語が沢山あるので、それだけでも大変なのですが、原作者の藤澤先生も可能な限り同席され、キャラクターのイメージや、台詞のニュアンスについてすり合わせをしていただいたので、かなり完成度の高い音声になっています。



また、DreamParty2009東京春で同時に披露されたのが、オープニングテーマ曲『Happy Merry Adventure!』(Barbarian On The Groove feat.Miglen)。

こちらも「たのだん」用に制作していただいたオリジナル曲で、「たのだん」のイメージどおり躍動感溢れる曲になってます。

こればかりは言葉で説明するより聞いた方が早いので、こちらをどぞ!



まさに本編の雰囲気通り、明るく楽しく、そして、少しホロッとするシーンもある物語を期待させてくれます。



さてさて続いては、こちらも物語を盛り上げてくれるBGMです。

BGMの重要性については、審査員の座談会でも語られてますが、GA文庫のK編集長が、よく言われている「映画を音を消して字幕だけで観たら、どれだけつまらないか」という言葉にあらわれていると思います。

悲しいシーンの悲しい曲が、どれだけ涙腺を刺激し、勇ましい時の勇ましい曲が、どれだけ心躍らせてくれるか。キネティックノベルにおける重要要素のひとつです。

「たのだん」のBGMを担当してくださったのは、新進気鋭の作曲家AmBushさんです。

彼にどのように発注するかというと、おおまかな曲のイメージと、どういうシーンで使いたいかのサンプルシナリオです。

例えば、蛮族たちとの戦闘に使われる曲だと、



どうです? 激しい戦闘の様子が見えてくるでしょう?

これが、CGや音声などと加わると、さらに一層盛り上がります。

どんどん組み上がっていく画面を見ていると、本当にキネティックノベルは、様々な要素が合わさった総合的なメディアなんだなと、よく分かります。

そのあたりは、体験版をご覧いただくのが分かりやすいかと思いますので、よければダウンロードしてみてください。

〜次回に続く〜




□4コマ連載・第3回♪ by 池田淳






第4回

ここまでの3回で、シナリオや音声など、重要なパーツが揃っていきましたが、今回は、一番視覚的にわかりやすいCGについてと、パーツが揃ってから完成までの道のりについて追っていきます。


まずは、もしかすると一番目にする時間が多い、背景について。

世界の様子を説明する時に、舞台となる街は人口がこれくらいで、建物の雰囲気は……と説明するより、これがルキスラの街です! とCGを表示したほうが早いわけです。



これならファンタジー世界の街の雰囲気が、一目で分かります。

こういう背景CGも、シナリオを元にラフ、線画、完成と順を追って制作していきます。

例えば、キャラクターたちが冒険に行く、湖畔の背景だとこんな感じ。(ラフ→線画→彩色)

   

この背景を使った画面がこちら。



背景というのは、舞台セットのように、キャラが活躍する土台になるので、あまり目立ちませんが重要な要素だったりします。落書きみたいな背景じゃ、ファンタジー世界と言われてもピンと来ませんからね。



世界ができたら、次はそこで活躍するキャラクターたちです。

主人公のシャーリィたちは、本のほうですでにキャラクターができあがっていますが、キネティックノベル用に登場するオリジナルキャラのデザインが必要です。

ここで登場するのは、ライバルグループのリーダー、ジャスティンです。
正式には、ジャスティン・フラムスティード。鋼鉄の赤い薔薇と異名を取る腕利きの冒険者です。

シナリオの言動から作成されたラフがこれ。



ラフに色を置いてみたところですが、これは完成形に近いバージョンで、髪の毛は縦ロールにしてほしいなど、何度かのやりとりの末、こうなりました。


でもって、線画



彩色



と、産まれてきましたー。

その他、ポニーやレトアといった新キャラも登場し、役者は揃いました。

というわけで最後に役者さんに演技をしていただかなければなりません。

 

表情やポーズ差分で、喜怒哀楽を表現するわけです。

戦闘の時には、こーんな感じで。



そして、物語上、ここぞという場面では、大きなCGが使われます。

これをイベントCGと呼んでます。

 

ここでも、動きと演出が入ります。

 

アニメーションだと、台詞と絵で表現するので、すべてを動かしますが、キネティックノベルでは文字もあるので、こんな感じになるわけです。あまり動きすぎると、それはそれで文字との組み合わせが難しくなるので、指定の段階から動きを考えて進めてます。

その動きに、効果音やエフェクトを使っておこなうのが、演出になります。

SEとか画面を揺らしたり光らせたり、タイミング次第で、かなり影響があります。



「たのだん」の場合では、「戦闘」や「ダンジョン探索」もあるので、それも演出を考えると、戦闘画面やダンジョンの画面などが必要になってきます。

ダンジョンで、この先を右に曲がって……と、文字だけで言ってもピンときませんから。

 

セッションでプレイヤーやGMが振ったサイコロを、右上で再現してます。しかも、細かいことですが、右下に表示してあるキャラクターを攻撃力などを表す数値が、状況に合わせて変化しています。

たとえば、魔法で防御力を上げれば数値も変化するなど。

TRPGを遊ぶときには、ある程度ルールを把握しておく必要がありますが、キネティックノベルでは、演出の一部くらいと気楽に考えてください。もちろん、実際のTRPGならではの楽しみも大きいので、機会があれば、ぜひチャレンジしてみてくださいね。キネティックノベル版「たのだん」をプレイしたことで、TRPGを遊ぶ人が増えたら嬉しいなぁ。



このように、CGや音楽などのパーツが揃ってから完成(マスターアップ)まで、必死の仕上げ作業が続きます。

実は、この記事を書いている今、まさに仕上げの真っ最中だったりします。

パーツを集めただけのバージョンから、完成までは時間をかければかけるほど、良くなっていくのが分かるので、最後は徹夜になることもしばしばです。こればっかりは、何作作っても同じなのは仕方がないです。ここで手を抜くわけにはいきませんから!

このように苦労して発売を迎えた作品は、我が子のように可愛いので、発売日にはショップさんをうろついている事が多いののですが、ハラハラしながら平積みの棚を見ている人を見かけても、そっとしておいてください。



プレイされた方が、面白いと言ってくださることが何よりのご褒美で、それを味わいたくて、苦しいことが多くても、何度もチャレンジしてしまいます。

どのクリエイターも同じ喜びを感じていると思います。

今回のキネティックノベル大賞ですが、シナリオやイラストなど、いろいろと部門がありますが、全部に共通していることです。



完成させていく喜びを、一緒に味わいましょう! ぜひ、ご応募ください!

〜END〜




□4コマ連載・第4回♪ by 池田淳
 ビジュアルアンテナ4コマでも、別の『たのだん』4コマが掲載されています!
 是非こちらもお楽しみ下さい。

『たのだん』



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